流体力学の大家である今井功先生。先生の著作を読んで、今井哲学を学ぶ。
先生の『電磁気学を読む』『複素解析と流体力学』『古典物理の数理』を二週間、読みます。
『電磁気学を読む』の一部。
(p.i)
「電磁気学はむずかしいとよくいわれる。しかし物理学を学ぶ以上、力学とともに電磁気学は避けて通れないことも事実である。学生時代以来、腑に落ちない疑問の点の数々を残しながらも、電磁気学について大体のところは解ったつもりでいたが、電磁流体力学を研究するようになって、学生時代からの疑問点が蘇ってきた。そこで、あらためて電磁気の本を読み返してみると、ますます解らないところがでてくる。学生時代に理解できなかったのはむしろ当然であったようにも感じられる。実際、静電気、電磁誘導、電気回路、…などそれぞれの分野についてはとり扱いも筋が通っているようであるが、電磁気学という一つのまとまった体系の中でどのような位置をしめるのかがはっきりしない。悪くいえば、電磁気学とはこれら各分野の雑然たる集積のようにも感じられる。学生としてはじめて電磁気学を勉強するとき、これらの各分野をコマギレ的に追いかけてゆくとすれば、’むずかしい’と思うのは無理もない話であろう。教える側にとっても同じ悩みがあるのではなかろうか。この責任は、現在の電磁気学の構成にあると思われる。すなわち、”電磁気学の基本法則はMaxwellの方程式である。これを知らなければ、電磁気学を本当に理解したことにはならない”という固定観念である。したがって、電磁気の講義をするときにも、Maxwellの方程式を到達目標として、それまではいわば間に合わせの説明で満足せざるを得ないといううしろめたさを感じることにもまるのではなかろうか。」
筆者は流体力学を専攻するものであるが、流体現象を研究する際、もちろん、流体力学の基礎方程式として連続の方程式やNavier-Stokesの方程式を使うけれども、これらは必ずしも不可欠ではない。むしろ、これらの方程式を導くための基礎になる質量・運動量・エネルギーの保存法則に立ちもどって考える方が有効なばあいがあるように思う。つまり、保存法則が基本であって、連続方程式、Navier-Stokesの方程式、…などは単にその数学的な表現に過ぎないのである。p.i
電磁気学においても事情は同じではないか。このような視点で電磁気学を見ると、思いあたるふしが少くない。そこで、保存法則の立場で現在の電磁気学がどこまでまとめられるか、調べてみようと思い立った。意外にも、すべてがこの立場でおおわれることがわかった。すなわち、”電磁場は運動量とエネルギーの保存法則を満たす一つの力学系である”ということである。保存法則を基本法則とすれば、これから’定理’としてMaxwellの方程式やLorents力の公式が導かれる。したがって、この理論体系は従来の電磁気学の理論体系と同等である。しかし、Maxwellの方程式に頼らず説明できる事柄が多々ある。電磁波の現象がその一例である。pp.i-ii
今井先生をはじめて知ったのは『数理科学の諸問題』という論文集であった。そこにあった今井先生の論文に衝撃を受けた。それ以降、先生をもっと知りたいと読み始めた。
『複素解析と流体力学』は10回ぐらい挑戦して挫折した。今回こそは頑張る。予定。
これらの著作を読み終わったら、今井先生の他の著作『流体力学 前編』『流体力学』『等角写像とその応用』『応用超関数論』を読んでみたい。
流体的世界像を手に入れるために。
僕から以上