疑念は探究の動機であり、探究の唯一の目的は信念の確定である。

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人物描像: 中戸川孝治北大名誉教授 (3) ---- 逸話、研究

前回の記事はこちら。  ここまでは先生の誕生から北大赴任までの経歴を紹介しました。

 

今回は中戸川先生から聞いたエピソードを記します。

 

 1995年の国際圏論学会

95年の7月にカナダのハリファックスにあるダルハウジー大学で国際圏論学会が開催されました( INTENATIONAL CATEGORY THEORY MEETING(CT95) Dalhousie Univ. in Halifax, Canada)。それは圏論誕生50周年およびエレメンタリー・トポスの発見25周年を記念してのサマーセミナー付随の一大学会でした。

そこには、圏論の生みの親であるマックレーン(Mac Lane)やエレメンタリー・トポスの発見者であるローヴェアー(Lawvere)など錚々たるメンバーが参加していました。以下https://www.mta.ca/~cat-dist/part.html:title = リストに載っている参加者の一部です。

Jiri Adamek ----- Abstract and Concrete Categoriesの著者
Michael Barr  ----- Category Theory for Computing Scienceの著者。Representation of categoriesという論文もあるけど、何書いてあるかさっぱりわからない。
Hongde Hu  ----- 聞いたことある名前。
Andre Joyal  ----- Categorical Logicで有名
Heinrich Kleisli  ----- MonadにおけるKleisli TripleのKleisli(だと思う) 
Anders Kock  ----- Synthetic Differential Geometryで一番有名の人。中戸川先生に「Kockのもとで勉強したいので彼とコンタクトとれますか?」と聞いた。ツテはないらしいが、彼の弟子にはツテがあるとのこと。
Jim Lambek  ----- Categorical Logicで有名。An Introduction to Categorical Logicの著者。

Mac Lane  ----- 言わずもがな。
Lawvere  ----- 言わずもがな。
Michael Makkai  ----- 勘違いしていた。たぶん有名。
Bob Rosebrugh  ----- Sets for Mathematicsの著者(Lawvereと)
Steve Schanuel  ----- Conceptual Mathematicsの著者(Lawvereと)。学会のとき食堂で先生の前に座って「離婚した元妻は日本人だった。日本人の女性はああなのか」みたいなことを話されたそうだ。
Robert Seely  ----- 圏論で有名の人。特に、Locally cartesian closed categories and type theoryは有名。
Myles Tierney  ----- Lawvereとほぼ同時期にエレメンタリー・トポスを発見した。だから、エレメンタリー・トポスはしばしばLawvere - Tierney toposと言われる。

 

先生はこの学会に参加していました。そして、サマーセミナーにも参加していました。サマーセミナーはLawvereとSchanuelが行いました。それがもとになって、Conceptual Mathematicsができました。その謝辞にはKoji Nakatogawaの名前が記載されています。そこには日本人は先生以外にもYoshimasa Hasegawaという人と、Shinobu Hirasawaという人がセミナー含めて参加していました(学会の参加のみならばKohei Sawabeという人もいました)。にもかかわらず、先生の名前だけが記載されています。どうやら、Lawvereがセミナーを発表しているとき、先生が間違えを指摘されたそうです。ですので、先生に対する謝辞が載っているとのことでした。

先生はConceptural Mathematicsに自分の名前があることを名誉だと思っているうちの一つであるとのことでした。もう一つは前回書いたBarkley Group in Logic and Methodology of Scienceのメンバーになれたことです。

 

 

さて、この学会で気になることが1つあります。それは参加者です。まず、圏論50年記念という節目の国際学会にも関わらず、重要な人物が何人も参加されていません。Grothendieck(1928-2014)はしょうがないとしても、Eilenberg(1913-1998)もYoneda(1930-1996)もDaniel Kan(1927-2013)もいないということです。他にもRobert GoldblattやPeter Johnstoneも参加していません。

さらに、先生は「マックレーンが見当たらなかった。」とおっしゃっていました。名簿にはマックレーンの名前があるので参加したはずですが、先生は「マックレーンがいなかった気がする。いた記憶がない。見ていない。これは謎だ。マックレーンの発表はキャンセルされたんだ」と声高に主張なさっていました。ホームページには集合写真がありマックレーンらしき姿も見受けられますので、おそらく先生の勘違いかと思われます。ですが、それを別にしても米田先生やKanなどは出席なさらなかったのか疑問に思います。

 

 

中戸川先生と林晋先生と八杉満利子先生の話

まだ、林先生も八杉先生もご存命ですのでこの話を書くのには躊躇しますが...

 

先生は京都にいたある日、林先生と八杉先生と三人で車に乗って出かけていました。林晋先生と八杉先生はいわゆる知り合いであり同僚です。彼らは二人でゲーデルの翻訳をしました(中戸川先生の名前も訳者の謝辞に載っています)。八杉先生は論理学コミュニティでは数少ない女性研究者ということもあり、そこではマドンナ的存在でした。
先生は後部座席にいました。そのとき、突然、林先生と八杉先生は台所の話をされました。「林くん(晋くん)、台所に〇〇あったっけ?」「それは、多分ないから買わなきゃならない」みたいな会話です。そのとき先生は「こいつら同棲しているな」と気づいたそうです。

林先生と八杉先生が付き合っていることはすぐ後に論理学コミュニティに周知されました。先生が広めたのではなく、別の人が言ったそうです(確か)。マドンナ的存在の八杉先生が若手の林先生と付き合っていることに皆驚いたとのことでした(年齢が高い順に八杉→中戸川→林)。 

 

ここで気になるのは「中戸川先生は八杉先生に好意を持っていたのか?」ということです。「八杉さん、林くんと付き合ってるのかよ!!!」とショックを受けたのでしょうか? どうなんでしょうかね.... 聞こうと試したのですが、曖昧な返事でした。また試してみます。

 

ちなみに中戸川先生はご結婚なされています。40歳ぐらいに先生のご兄弟(姉か妹か)の友人とお見合いをして結婚されました。子供についてはうかがっていません。多分、いないと思います。

 

 

中戸川先生の研究について

正直、中戸川先生が何で有名なのか何を研究しているのか全くわかりません。いつもよくわからないことをひたすらペチャクチャ話している感じです。先生のセミナーに参加したときこんなことがありました。本来は生徒が発表をするところに、先生はすかさずコメントを加えました。それは普通のセミナーもそうなので問題ないのですが、先生はそのあと90分間授業が終わるまでひたすらしゃべりまくりました。そして、最後には涙目になって「私はフレーゲ以後の論理学を変えたいんだ!」と熱弁しました。

その異常さに普通はドン引きすると思います。「泣いちゃったよ...」と。しかし、私は「この人、頭狂ってるな、面白いな」と興味を引きました。それ以降、先生にお世話になっていろいろ話を聞いたり、勉強したことを発表したり議論したりしました。

 

先生は何やっているかわかりません。しかし、先生の研究のキーワードは「実体化されない述語」というものです。曰く、それは未確定であり、捉えどころのないモヤモヤしたもの、漠然としたものです。これは西洋的な「実体概念」ではありません(what is good)。そうした、実体化されない述語を研究した結果、圏論や南部仏教に行き着いたとのことです。先生の意図はなんとなくわかるし、しかしまだわかりません。誤っているかもしれません。

「実体化されない述語」とは先生の師匠(誰かは忘れましたが)が発したものです。それを先生は考え続けています。その執着ぶりは驚嘆に値し、尊敬します。

 

だいたいこんな感じです。

 

 

僕から以上