疑念は探究の動機であり、探究の唯一の目的は信念の確定である。

数学・論理学・哲学・語学のことを書きたいと思います。どんなことでも何かコメントいただけるとうれしいです。特に、勉学のことで間違いなどあったらご指摘いただけると幸いです。 よろしくお願いします。くりぃむのラジオを聴くこととパワポケ2が人生の唯一の楽しみです。

随伴とモナド (1): Introduction これからやることとモナドの歴史

どうも僕です。

最近、しばらくご無沙汰でありました。書こうと思っていたけれどもなかなか書けませんでした。ですが、この間にもブログのアクセス数は200/1dayのときもあり、とても驚きました。どの記事が見られているか調べたら、旅行に使えるロシア語が一番見られていました。おそらくW杯の影響でしょうか。ペテルブルクの気候や虫や治安についてもアクセス数を伸ばしていました。気候以外は全然使えない記事ですが.....

しかし、ロシア語だけでなく不動点定理の記事も伸びていました。それもとても驚きました。不動点定理の一連の記事はまだ続きがあるので、早く書かなければならないとは思っていますが.....気持ちは乗りません。

 

さて、今回から圏論における随伴とモナドに関する一連の記事を書きたいと思います。

随伴およびモナドの発展の歴史に沿って解説したいと思います。

モナドはアイディアとしては随伴とは直接関係ありませんが、モナド----Triplesと最初呼ばれた----が定式化され理論化されたのは随伴が直接の起因でありました。したがって、随伴とモナドをセットで議論するのは正当であり、ゆっくり解説していきたいと思います。

 

一連の記事で行うこと 

これからおこなう一連の記事では随伴とモナドについて以下の議論をする。

  • 随伴の定義と例
  • 随伴のいくつかの定理
  • モナドの定義と例
  • モナドの定理(Eilenberg-Moore 圏およびKleisli 圏)
  • Beckの定理

おおよそ、Mac LaneのCategories for the Working Mathematician (CWM)のVI. Monads and Algebrasの内容をゆっくりと解説するつもりである。

ただし、この一連の記事はモナドを中心としている。そこで随伴はそれほど詳しく説明されていないことに注意したい。例えば、General Adjoint Theorem---随伴の存在定理---は議論されない。随伴は軽くおこなうつもりである。

 

 

随伴とモナドの歴史

随伴とモナドの歴史は以下のような感じである。

 

(1) 1958 Godemet

R. Godement (ゴドマ)の Topologie algébrique et théorie des faisceauxのAppendixにモナドのアイディアが記載されている。それをGodementはstandard constructionと呼んでいる。もちろんこれはフランス語からの英語訳であり、原著がどのように呼んでいるのかはまだ知らない。

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710023433j:plain

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710023442j:plain

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710023613j:plain

 

(2) 1958 Kan

ほぼ同時期にD. Kan(カン)が有名な随伴関手(Adjoint Functors)の論文を提出。これにより随伴の理論が生まれる。

Kan, Adjoints Functors pdf

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710220752p:plain

 

(3) 1961 Huber

P. J. Huber (フーバー)は随伴 {{\bf C}\overset{F}{\underset{G}{\rightleftarrows}}{\bf D}} が成り立っているとき、圏 {\bf C}モナドであるならば、圏 {\bf D}モナドであることを示した。つまり、随伴とモナドの関係性を指摘した。

Huber, Homotopy Theory in General Categories pdf

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710233254p:plain

 

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710233402p:plain

 

 

(4) 1965 Eilenberg and Moore

S. Eilenberg(アイレンバーグ)とJ. C. Moore(ムーア)によりTriple(トリプル)を導入する。Eilenberg-Moore圏を証明する。トリプルとはstandard construction(の双対)であり、また現在モナドと言われるものである。

Eilenberg and Moore, Adjoint Functors and Triples pdf

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710221536p:plain

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710221550p:plain

 

Reveiw: P. J. Huber

 

 

(5) 1965 Kleisli

H. Kleisli(クライスリ)が同時期に同じ結論を導いている。ただしこの場合は構成方法が異なる。Kleisli圏とも呼ばれる。

Kleisli, Every Standard Construction is Induced by a Pair of Adjoint Functors pdf

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710222850p:plain

 

 

 

(6) 1967: Beck

J. M. Beck(ベック)が博士論文でTripleの理論を深める。ここにはBeckの定理が記載されている。原稿は1964年にほぼできていた(リプリント 2003)。

Beck, Triples, Algebras and Cohomology pdf

 

 

(7) 1969 Seminar on Triples

1966年から1967年に圏論に関するセミナーをまとめた本。さまざまな研究者のTripleに関する論文がある(リプリント 2008)。

Seminar on Triples and Catgorical Homology Theory, ed. by B. Eckmann and M. Tierney pdf

 

 

(8) 1972 Mac Lane

S. Mac LaneがCategories for the Working Mathematician(1st ed)を出版する。

そこではトリプルの代わりにモナド(Monads)と呼んでいる。以降、Mac Laneの影響により名称はモナドに取って代わられた。

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710023621j:plain

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710023629j:plain

f:id:yoheiwatanabe0606:20180710023638j:plain

 

 

我々はこれから一連の記事で随伴とモナドを歴史に沿ってゆっくりと議論していく。ただし、随伴やモナドの起源がホモロジー関係であるので、それらも説明しなければならないのだが、私にはその能力がないので、圏論一般の抽象的な議論になってしまうかもしれない。そこはご了承願いたい。

 

 

参考文献

[1] S. Awodey, Category Theory 2nd, Oxford University Press, 2010, Oxford Logic Guides Vol.52

[2] M. Barr and C. Wells Toposes, Triples and Theories, Springer-Verlag, reprint in Theory App Cat, 1985(2005) (No. 12), (pp.1-288) pdf

[3] J. M. Beck, Triples, algebras and cohomology, dissartation, reprint in Theory App Cat, 1967(2003) (No. 2) (pp.1-59) pdf

[4] B. Eckmann and M. Tierney ed., Seminar on triples and categorical homology theory, Springer-Verlag, reprint in Theory App Cat 1969(2008) Lecture Notes in Mathematics Vol. 80 (No.18) (pp.1-304) pdf

[5] S. Eilenberg and J. C. Moore, Adjoint functors and triples, Illinois J. Math., (1965) 9, No. 3, pp.381-398 pdf

[6] R. Godement, Topologie algébrique et Théorie des faisceaux, Actualités scientifiques et industrielles 1252, Publications de l' Institu de Mathématique de l' Université de Strasbourg XIII 1958 Hermann, Paris

[7] P. J. Huber, Homotopy Theory in General Categories, Math. Annalen (1961) 144 No. 5 , pp. 361-385 Oct. pdf

[8] D. Kan, Adjoint functors, Trans. Amer. Math. Soc. (1958) 87 No. 2, pp. 294-329 Mar. pdf

[9] H. Kleisli, Every standard construction is induced by a pair of adjoint functors, Proc. Nat. Acad. Sci. U. S. A. (1965) 16 pp. 544-545 pdf

[10] S. Mac Lane, Categories for the working mathematician, Springer-Verlag 1971/1998 GTM 5 Berlin and New York 1st/2nd 

 

 

つづく