私は変分法(Variational Calculus/ Calculus of Variation)を勉強していました。というか、今も勉強しています。私は変分法が大好きです。いつまでやっても飽きないです。ゲルファント・フォーミンの『変分法』が私の人生を変えた本の一つです。
いつか変分法のすべてをまとめた本を書きたいと思っていますので、そのメモみたいのを書きます。今、私が知っている変分法のすべてといった感じです。
変分法とは何か
変分法とは汎関数(functional)の微分法である。特に、汎関数の極値問題を取り扱う。ここで、汎関数とは関数をインプットして、実数をアウトプットする関数のことである。
汎関数は無限次元変数の関数と考えることができる。
以下の雑誌は変分法が取り上げられている。とりあえず一回読んでみるのもいいかも。全体がわかるから。でも、個人的には変分法が興味あるならゲルファント・フォーミンの本か、別の変分法の本を勉強したほうがいいかも。このような雑誌はあまり頭に入らないから。
変分法の基礎
一変数・多変数の微積
変分法を勉強する前に、復習と変分法との比較のために一変数・多変数の微積、特に極値問題を勉強したほうが面白いと思う。
一変数関数の極値問題は次である。なめらかな関数 において点 が極値を持つならば(極値であるための必要条件)、が成り立つ。要は、点 はクリティカル・ポイントである。さらに、点 が極小値であるための必要条件は、である。だが、容易にわかるように、関数 は、これらの必要条件を満たすが、は極値ではない。点 が極小値であるための十分条件を求めなければならない。それは、である。
多変数関数の極値は次である。同様になめらかな関数 において点 が極値を持つための必要条件は点 で各偏微分が0であることである。つまり である。一変数と同様に、極値の十分条件を調べるときは、二階の偏微分を見なければならない。特に、クリティカルポイント上のヘッセ行列(Hesse matrix)を調べなければならない。ここで、線形代数の知識が必要となるのである。シルベスターの判定条件など特に二次形式の知識が必要になる。点 が関数 の極小値であるための十分条件は、そのヘッセ行列の固有値がすべて 0より大きいことである。
多変数関数には Lagrange未定乗数法というものもある。これはいわゆる条件付き極値問題である。
これらの極値問題が汎関数に対して拡張することができるのである。ただし、もちろん異なっているところもある。
他にも今後のために陰関数定理なども復習した方が後のために有益であろう。
変分法の基本問題
変分法は例えば、ある固定された二点間の距離の極小値を求めるときに使われる。実際は、極小値は最短距離のことだが。
関数 が与えられて、と固定されているとする。そのとき、距離が定まり、それは で与えられる。つまり、汎関数 が与えられる。一般に汎関数は
として与えられる。
このときの汎関数 が 級曲線 で極値を取るための必要条件は、何か? それは、オイラー方程式
を満たすことである。
これが、一変数関数における極値の必要条件の無限次元版である。
変分問題の一般化
変分法の基本問題をさまざまな形で一般化させる。
- 自由端問題: 端を固定せずに自由に動くときの極値の必要条件
- 束縛条件のある変分問題: 多変数関数におけるLagrange未定乗数法の汎関数バージョン
- 級の関数 の変分問題
- ベクトル関数における変分問題: を に変えたときの極値の必要条件
- 階微分のある関数 を被積分関数とする汎関数の極値の必要条件
- 多変数の変分問題: 汎関数 を にした極値の必要条件
直接法
これまでは偏微分方程式を解くという形であったが、極小値を直接解くという方法もある。それが直接法である。関数列を考えるから自然と関数解析の知識が必要となる。つまり、解析寄りになる。
物理学への応用(変分原理)
変分法は変分原理として物理学のさまざまな分野に応用されている。
古典力学
- ニュートン方程式からオイラー・ラグランジュ方程式を変分原理を用いて導く
- オイラー・ラグランジュ方程式からハミルトン方程式をルジャンドル変換を用いて導く
- ハミルトン方程式からハミルトン・ヤコビ方程式をカラテオドリの測地場を用いて導く
- ネーターの定理を導く
幾何光学
アイコナール方程式とかいろいろ。
電磁気学
変分原理は使われる。
流体力学
変分原理は使われる。
統計力学
変分原理は使われる。
量子力学
経路積分が使われる。
相対性理論
変分原理が使われる。
工学への応用
手持ちの材料からいかにして最大の成果が得られるかという考えは工学的。
最適化・線形計画法
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経済学への応用
効用を最大化するという考えは経済的。
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多様体上の変分法
変分法を理論的に体系化させる。つまり、多様体上の変分法を考える。
モース理論
関係がある。
モース理論―多様体上の解析学とトポロジーとの関連 M.SpivakとR.Wellsによってノートされた講義録に基づく POD版
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シンプレクティック幾何学・フレアー理論
無限次元モース理論
D. Salamon, Lectures on Floer Homology, Symplectic geometry and topology (1997)
幾何学的変分問題・調和写像
調和写像
おもしろそう。だが、まだまだ知らないことだらけ。
変分法を極める、それは一つの目標でもある。
追記 2018/08/24 変分法において忘れられていた側面: アルゴリズム
これまで私は変分法について様々な側面から面白いものだと考えていた。変分法には理論的な側面や応用的な側面があるからである。だが、これまで私は変分法のもう一つの側面を見ていなかった-------それは極値の探索つまりアルゴリズムである。
理論的な側面のみ考えれば、例えば、関数 の極小値(最小値)の必要条件は である。よって、これを解き、 は極小値の候補であることがわかる。
だが、一般には を解くことは容易ではない。したがって、我々には工学的・プログラミング的観点から、極小値の探索が必要となるのである。この観点が今までなかった。
極値の探索は例えば、最降下法がある。これは勾配 に沿って、極値を見つけ出すアルゴリズムである。さらに他にもニュートン法や準ニュートン法などがある。さらに、極値にハマりだしたら、それを抜け出す方法も考えなければならない。
このような工学的な側面も変分法にとって極めて重要である。手始めに次の書籍を読んで、これらの考えを勉強しよう。
僕から以上