これから圏論の概括をおこなう。
すなわち、
- 圏, 関手, 自然変換
- 極限・余極限
- 随伴関手
- 圏同値
- モナド・T代数
- カン拡張
を勉強していく。具体例は少ないが丁寧に書いていくつもりである。
今日は圏の定義とその例をおこなう。
定義
定義(圏)
圏は対象と呼ばれるものの集まり
と射と呼ばれるものの集まり
と4つの操作
から成り立つ。
対象をと書き、射を
と書く。
は
の関数であり、
は
の関数である。対象
をそれぞれ
のドメインとコドメインと言う。
のとき、射を
などと書き、
は
から
への射と言う 。
は
の関数であり、各対象
に対して、
を恒等射と言う。
を
から
への射の集まりとする。合成
は
の関数である。つまり、
に対して、
を対応する。
これらは次の公理を満たす。
- 結合法則: 任意の射
に対して、
が成り立つ。
- 恒等法則: 任意の射
に対して、
が成り立つ。
圏 が小さいとは、圏の対象
および圏の射
がともに集合であることである。
圏 が局所的に小さい(locally small)とは、任意の対象
に対して、
が集合であることである。
ある圏 に対して、圏
が
の部分圏であるとは、次のデータからなる。
は
のいくつかかすべての対象の集まりであり、
は
のいくつかかすべての射のあつまりであり、合成に関して閉じている。
つまり、すべての に対して、
かつ、
である。
さらに、圏 の部分圏
がフル(full)であるとは
が成り立つことである。
圏の例 1
圏のいくつかの例(コンクリートな圏)を考えてみよう。
: 集合の圏
対象は(小さな)集合であり、射は写像である。合成は通常の集合の合成。恒等射は恒等写像 である。
ここで"(小さな)"としているのは、曖昧であるが無視してもいいと思う。これをちゃんと扱おうとすれば宇宙という概念を導入しなければならない。しかしめんどくさいので省略する。
次は、代数的な構造をもつ対象とそれらを保存する射からなる圏の例である。
: モノイドの圏
対象は(小さな)モノイドであり、射はモノイドのモルフィズムである。モノイド とは、
は集合で、
であり、合成法則と単位元がある。
モノイドのモルフィズム とは、
の写像であり、
かつ
を満たすものである。
: 群の圏
対象は(小さな)群であり、射は群のホモモルフィズムである。つまり、 である。合成は通常のものである。
は
のフル部分圏である。
: アーベル群の圏
対象はアーベル群であり、射はアーベル群のホモモルフィズムである。つまり、 である。合成は通常のものである。
明らかに は
のフル部分圏である。
:
加群の圏
: 体
上のベクトル空間の圏
対象は体 のベクトル空間であり、射は線形写像である。
次回はこのようなコンクリートでない圏の例と与えられた圏に対して新たに構成される圏について考える。
僕から以上