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数学の一般化について: 一次関数と比例の簡単な例を用いて

サボり記事第二弾

予約投稿する。1/30, 23:59

うまくいくといいんだけど。

今回は数学の一般化について、一次関数({y = ax + b})と比例({y = ax})の例を用いて議論したいと思います。

 数学研究の定石は概念や理論を一般化したり抽象化することである。

一般化することによって数学に何をもたらすのか。 一般化することによって何も議論できなくなるように思われる。しかしどうなのか。これから一次関数と比例の例を用いて検討してみよう。

 

比例は{y = ax}という形で書かれる。これは次のような定理(性質)がある。

定理1

2つの任意の比例{y = a_1x}{y=a_2x}

(1) ただ原点で交わる

もしくは 

(2) 任意の点で交わる

のいずれかを満たす。 

 

(1)が成り立つ条件は{a_1\neq a_2}であり、(2)が成り立つ条件は{a_1 = a_2}である*1

 

 

さて、一次関数{y = ax+b}は比例{y = ax}の一般化である。なぜなら、一次関数{y = ax + b}{b = 0}のとき、この式は比例{y = ax}となるからである。

 ではこのとき上の定理1はどのようになるのだろうか。それは次のようになる。

定理1'

2つの任意の一次関数{y = a_1x + b_1}{y = a_2x + b_2}

(1') ただ一点で交わる

もしくは

(2') 任意の点で交わる

もしくは

(3) 一点も交わらない

のいずれかを満たす。

 

(1')が成り立つ条件は{a_1\neq a_2}であり、(2')が成り立つ条件は{a_1 = a_2} かつ{b_1 = b_2}であり、(3)が成り立つ条件は{a_1 = a_2} かつ{b_1\neq b_2}である。

 

定理1と定理1'を比較すると、比例という概念を一次関数に一般化することによって、新しい現象が現れていることがわかる。つまり、まず(1)と(1')を比べると特殊な比例の場合は原点で交わっていたが、対して一般の一次関数の場合は必ずしも原点で交わるとは限らないことがわかる。ただ、両者とも条件は同じであり直線がただ一点で交わることが共通であることがわかる。次に(2)と(2')を比べると、それらはほとんど同じであることがわかる。最後に比例では現れなかった現象(性質)が一次関数に登場する。それが(3)である。つまり一点も交わらないことがあるということである。

 

一点も交わらないということは特殊な比例の場合にはあり得ない。が、比例が一般化された一次関数の場合に初めて現れるのである。これが概念を拡張することによって新たな事象が現れることの事例である。

しかも、概念が拡張されたことによりこれまでの概念もより明確に理解することができる。「実は原点で交わることは本質的なことではなく、あくまでも一点に交わることが本質なのか」と一般の一次関数を研究することによってわかるのである。これもまた一般化による効果である。

 

このようなことは数学のいたるところに現れてくる。特に有限次元から無限次元への一般化などは顕著に現れると思う*2。概念を拡張することによって数学の世界は豊穣になるのである*3

 

まとめると、概念を一般化したり抽象化したりすることによって数学の現象は新たなものが生まれ、さらにこれまでの概念や理論がより明瞭になるのである。

 

 

僕から以上

 

*1:本当は図を挿入したいのだが、私が図を作ることができないのでやむなく図は省略。

*2:例えば有限次元ベクトル空間と無限次元ベクトル空間にはかなりの違いが生じる。有限次元ノルム空間ならばすべてのノルムは同値だが、無限次元ではそうではないなど。

*3:体上のベクトル空間には常に基底が存在するが、一般の可換体上のベクトル空間では常に基底が存在するとは限らない。など。