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圏論(Category Theory)についての覚書: 圏論の基礎を整理する(3): 圏論の基礎概念をおおざっぱにまとめる

サボり記事第六弾
予約投稿第五弾 2/3 23:59予定

 今回は圏論のことについて続きを書きます。こちらが 前回の記事で、こちらが、 最初の記事です。

 

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第II部: Functors, Natural Transformations, Equivalences and Yoneda Lemma

 

関手(Functors)

関手とは数学的抽象物である圏と圏との間にある性質を満たす対応関係である(写像)である。

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正確には上の定義はコバリアント・ファンクター(Covariant functor)であり、関手にはもう一つコントラバリアント・ファンクター(Contravariant functor)がある。

 

関手の例

関手の例はたくさんある。これまで勉強した数学の概念を関手として再解釈することは、いいトレーニングになるだろう。具体的な例を2つあげる。まずは、線形代数である。

(1): FDVeckkを考える。つまり、対象は体k上の有限次元ベクトル空間であり、射はそれらの間の線型写像とする圏である。このとき、圏FDVeckkからそれ自体へのコントラバリアント関手{^*: \bf{FDVeck}_\it{k}\to\bf{FDVeck}_\it{k}}を次のようにして考えることができる。対象は任意のベクトル空間{V}からその双対空間{V^*}へうつる。射は任意の線形写像{f:V\to W}から {f^*: W^*\to V^*}へうつる。ただし、{f^*(g):= g\circ f}

for all {g\in W^*}である。

 

(2): 多様体の圏{\bf{Mfd}}ベクトルバンドルの圏{\bf{VB}}を考える。つまり、多様体の圏{\bf{Mfd}}とは対象が滑らかな多様体で射が滑らかな写像からなる圏であり、ベクトルバンドルの圏{\bf{VB}}とは対象がベクトルバンドルで射がバンドル写像からなる圏である。このとき、次のように構成された{T: \bf{Mfd}\to\bf{VB}}{\bf{Mfd}}から{\bf{VB}}へのコバリアント関手である。{T}多様体の圏{\bf{Mfd}}の対象{M}タンジェント・バンドル{TM}にうつす。これはベクトルバンドルの圏{\bf{VB}}の対象である(つまりタンジェントバンドルはベクトルバンドルである)。{T}多様体の射 {f: M\to N}{T(f): TM\to TN}とうつす。ただし、{T(f)}は次のように定義される。{T(f)( (p, v_p) ):= (f(p), f_{*, p}(v_p) )}

for all {(p, v_p)\in TM}{T(f)}はバンドル写像である。したがって{T: \bf{Mfd}\to\bf{VB}}はwell-definedである。さらに、容易に{T}は関手の公理をみたすので、これは関手である。

 

 

一般的な関手を3つほど紹介する。どれも重要。 

(1): プレシーフ(Presheaves)

{\bf{C}}のプレシーフとは{\bf{C}}の双対圏{\bf{C}^{\text{op}}}から集合の圏{\bf{Sets}}への関手のことを言う。

 

(2) ホモ・ファンクター(Homo-functors)

{\bf{C}}をローカリー・スモール・カテゴリーとする。つまり、{\bf{C}}の任意の対象{A, B}に対して、{A}から{B}への射の集まり{\text{Hom}(A, B)}が集合である、そのような性質を満たす圏のことである。{X}{\bf{C}}の対象とする。このとき、次のようにしてコバリアント・ファンクター{\text{Hom}(X, -): \bf{C}\to \bf{Sets}}コントラバリアント・ファンクター{\text{Hom}(-, X): \bf{C}^{\text{op}}\to \bf{Sets}}を定義することができる。

(i): {\text{Hom}(X, -)}: \bf{C}\to \bf{Sets}

対象は{A\in \bf{C}}から{\text{Hom}(X, A)}へとうつる。{\bf{C}}はローカリー・スモール・カテゴリーより、{\text{Hom}(X, A)}は集合である。つまり、{\text{Hom}(X, A)\in \bf{Sets}}である。射は {f:A\to B}\in\bf{C}{\text{Hom}(X, f): \text{Hom}(X, A)\to \text{Hom}(X, B)}にうつす。ただし、{\text{Hom}(X, f)(g):= f\circ g}である({g\in \text{Hom}(X, A)})。

容易にわかるようにこのように定義された{\text{Hom}(X, -)}: \bf{C}\to \bf{Sets}はコバリアント・ファンクターである。

(ii) {\text{Hom}(-, X): \bf{C}^{\text{op}}\to \bf{Sets}}

(i)と同様に定義すればよい。

対象は{A\in \bf{C}^{\text{op}}}から{\text{Hom}(A, X)\in \bf{Sets}}へとうつる。 射は{f:A\to B}\in\bf{C}^{\text{op}}から{\text{Hom}(f, X):\text{Hom}(B, X)\to \text{Hom}(A, X)}へとうつる。ただし、{\text{Hom}(f, X)(g):= g\circ f}である({g\in \text{Hom}(B, X)})。

これはコントラバリアント・ファンクターであり、さらにプレシーフである。

 

(3) 忘却関手(Forgetful functors)
簡単だけれども重要な概念。

ある構造を捨てるような関手のこと。例えば、群の圏{\bf{Grp}}があるとする。つまり群の圏{\bf{Grp}}とは対象が群であり射が群の準同型からなる圏のことである。この群の圏から集合の圏への忘却関手とは、対象は群からその群構造をなくした単なる集合にうつり、射は準同型写像から単なる写像へとうつるものである。

忘却関手はほかにもたくさんある。 

 

フェイスフル・フル・エッセンシャリ・サージェクティブ

集合あいだの写像(map)には単射全射があったように、圏のあいだの関手にもそれらに相当するものを定義することができる。それらがフェイスフル(Faithful)とフル(Full)である。 さらに対象に関する射{C\mapsto FC}全射であるとき、関手{F}を本質的全射または稠密と言われる。

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実は、圏同値とは、関手{F: \bf{C}\to \bf{D}}がフェイスフルでフルでエッセンシャリ・サージェクティブであることと同値である(後者参照)。 

 

関手の合成と恒等関手と圏の圏 

2つの関手 {\bf{C}\overset{F}{\to} \bf{D}\overset{G}{\to}\bf{E}}があるとき、関手の合成を考えることができる。さらに、対象{A}の恒等写像{1_A: A\to A}が存在するように、圏{\bf{C}}の恒等関手{1_{\bf{C}}: \bf{C}\to\bf{C}}が存在する。したがって、圏の圏(The category of all small categories)を考えることができる。

 

Representable Functors, Free functors

 

Limits and Colimits

重要。けど、まだよくわからない。これは対象{A}{B}の積{A\times B}などの一般化として考えることができる。 

 

 

自然変換(Natural Transformations)

自然変換は関手と関手との間の写像である。つまり、「関係の関係」である。極めて重要であるが、意外に使わない代物かもしれない。普通に数学で圏論を使うならば、圏と関手で十分なのかもしれない。

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自然変換 {\alpha: F\to G}が自然同型(Natural isomorphisms)であるとは、任意の対象 {A}にたいして、{\alpha_A: FA\overset{\simeq}{\to} GA}が同型であることである。 

 

ファンクター・カテゴリー(Functor categories)

自然変換は自然変換の合成を考えることができる。さらに恒等変換も考えることができる。 したがって、対象が圏であり射が関手である圏を考えたように、同様に対象が関手であり射が自然変換であるような圏を考えることができる。それをファンクター・カテゴリーと言う。

イクィバレンス(Equivalences)

圏の同値を考える。

定義

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定理 イクィバレンスは関手{F:\bf{C}\to\bf{D}}がフルでフェイスフルでエッセンシャリ・サージェクティブであり、その逆も成り立つ。

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{\bf{C}}{\bf{D}}が双対(Dualities)であるとは、{\bf{C}}の双対圏(反圏){\bf{C}^{\text{op}}}が圏 {\bf{D}}と圏同値であることである。例えば、反ブール圏{\bf{Boole}^{\text{op}}}はストーン圏{\bf{Stone}}と圏同値である。つまり、ブール圏はストーン圏と双対である(The duality between the Boolean category and the Stone category)。 

 

米田の補題(the Yoneda Lemma)

米田の補題圏論の表現定理と考えることができる。米田の補題から群論のケーリーの表現定理を導くことができる。 

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Yoneda embedding

 

 

 

第III部: Adjoints and Monads

 

随伴(Adjoints, Adjunctions)

随伴は関手の特殊なバージョンである。

 

随伴の直観的定義 

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圏論におけるアジョイント(随伴)はヒルベルト空間論におけるアジョイントと多かれ少なかれ並行関係がある。

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随伴は自然同型である

随伴は自然同型である。つまり、{F\dashv G}かつ{F\dashv G'}ならば、{G\cong G'}である。それを証明するために普通は米田の補題を使う。けれども、Category Theory in Contextでは直接証明しているパターンも記載されている。 

 

随伴の例

たくさんある。 

 

随伴の他の定義とその同値の証明 

 随伴は他に2つの定義がある。一つは普遍性から定義されているものである。

 

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イクィバレンスは随伴より条件が強い。

イクィバレンスは随伴より強い。つまり、イクィバレントならば随伴が成り立つ。

 

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 Smith(pp.252-253)

 

アジョイントの存在定理

関手{F: \bf{C}\to\bf{D}}が存在するとする。関手がある条件を満たすならば、圏{\bf{D}}から圏{\bf{C}}へのある関手{G: \bf{D}\to\bf{C}}が存在して、{F}は随伴である。つまり、{F\dashv G}である。

一般のアジョイントの存在定理は圏論の入門書の本にはあまり書かれていない。Freydの本を直接参照したほうがいいのかもしれない。 Freyd, Abelian categories, pp.84-85

 

Monads

モナドはコンピュータ・サイエンスとかで使うらしい。

 

定義

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随伴ならばモナドである。

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モナドならば随伴を持つ圏が存在している(Eilenberg-Moore category)。

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Operands

 

 

最後に 

まとめとしては全然ダメですが、まぁこんな感じです。 

 

 

僕から以上