今日も無駄な話。
どうでもいい話。圏論においてさまざまな概念をどのように書けばいいのか、という話。
- 圏と対象の表し方
- (1) S. Mac Lane, Categories for the Working Mathematician (CWM)の場合
- (2) S. Awodey, Category Theory(CT)の場合
- (3): T. Leinster, Basic Category Theory(BCT)の場合
- (4): M. Barr and C. Wells, Category Theory for Computing Science(CTCS)の場合
- (5): F. W. Lawvere and R. Rosebrugh, Sets for Mathematics(SM)の場合
- (6): J. Adámek, H. Herrlich and G. E. Strecker, Abstract and Concrete Categories The Joy of Cats(ACC)の場合
- (7): P. Smith, Category Theory A Gentle Introduction(CTGI)の場合
- (8): E. Riehl, Category Theory in Context(CTC)の場合
- 自然変換の表し方
- 随伴の表し方
- 終わりに
圏と対象の表し方
(1) S. Mac Lane, Categories for the Working Mathematician (CWM)の場合
ちょっとよくわかりにくいけども...
圏:
対象:
圏は太文字にも斜体でもない。
(2) S. Awodey, Category Theory(CT)の場合
圏:
対象:
Awodeyの本では圏の記号と対象の記号が基本的に一致している。圏は太文字で書かれている。
圏をとすると対象はとなっている。記号が統一されていていい。だが、ダッシュ()がしばしば使われている。
この書き方はいいかもしれない。 ただ、たくさんの対象を使う場合、少し汚く書かれるかもしれない。綺麗に書こうとすると2回のダッシュを使うことになる。その代わりにを使うとすると、少し汚くなる(統一感がなくなる)。
(3): T. Leinster, Basic Category Theory(BCT)の場合
圏:
対象:
圏をと書くことによって、対象と統一的に書くことができる。このような書き方も綺麗であるからいい。だが、圏(Category)をと書くのに少々抵抗感がある。
圏を斜体(script)で書くことによって、一般性を表している。集合の圏などはと太文字で書かれている。また、小さな圏を表すときも太文字で書かれている。このことによって極限(limits)を定義するとき綺麗に書ける(図式(diagram)を定義するとき、小さな圏から圏への関手とする, p.118)。
(4): M. Barr and C. Wells, Category Theory for Computing Science(CTCS)の場合
圏:
対象:
(5): F. W. Lawvere and R. Rosebrugh, Sets for Mathematics(SM)の場合
圏:
対象:
(6): J. Adámek, H. Herrlich and G. E. Strecker, Abstract and Concrete Categories The Joy of Cats(ACC)の場合
圏:
対象:
(7): P. Smith, Category Theory A Gentle Introduction(CTGI)の場合
圏:
対象:
(8): E. Riehl, Category Theory in Context(CTC)の場合
圏:
対象:
いくつかの本では対象をで書かれる。これも一貫性があるが、唯一気になるところは、圏の定義の1つである射の合成のアソウシエティビティ(associativity)を言うとき、少し困ることである。つまり、対象を4つ使わなければならず、対象をで書くならば、これプラスを使えばよく、綺麗に書ける。つまり 。だが、を使うと、もう1つの対象をで書くと、どのように書くかで迷う。一方で、と書くのか、それとも他方で、と書くべきか....ほんとどうでもいいけど、気になる。
自然変換の表し方
(1): Mac Lane, CWMの場合
自然変換
自然変換を他の矢印と区別するために、矢印の上にドットがついている。
(2): Awodey, CTの場合
自然変換
矢印は他のもの(射や関手)と同じ。
(3): Leinster, BCTの場合
自然変換
普通に書くときは、普通の矢印であるが、図式で自然変換が使われるときは、と書かれる。
(4): Barr and Wells, CTCSの場合
自然変換
ただし、関手はである。
矢印は普通。
(5): Lawvere and Rosebrugh, SMの場合
自然変換
ただし、関手はである。
(6): Adámek, Herrlich and Strecker, ACCの場合
自然変換
(7): Smith, CTGIの場合
自然変換
ここで、関手はである。
(8): Riehl, CTCの場合
自然変換
ここで、関手はである。
随伴の表し方
(1): Mac Lane, CWMの場合
随伴
どういうわけか、随伴を定義するとき圏がとなっている。関手は普通にである。
(2): Awodey, CTの場合
随伴
どういうわけか、随伴を定義するとき関手の1つがとなっている。
(3): Leinster, BCTの場合
随伴
普通。統一性がある。
(4): Barr and Wells, CTCSの場合
随伴
少し変更されている。
(5): Lawvere and Rosebrugh, SMの場合
随伴
ここでも、圏が少し変わっている。んー、どうしてだろう。慣習かな....?
(6): Adámek, Herrlich and Strecker, ACCの場合
随伴
ただし、関手
(7): Smith, CTGIの場合
随伴
ここで、それに対する関手はである。
(8): Riehl, CTCの場合
随伴
普通。
終わりに
実に無駄なことをまとめてしまった。
しかしいくぶん気になったので書いた。
個人的には圏をと書き、対象をと書き、自然変換をと書き、随伴をと書くのが好きである。ただ、そうすると、圏 に対して対象がとなってしまい、統一性がなくなり見た目が悪くなるとも言える。だが、Awodeyのようにそろえるのも少し抵抗があるし、Leinsterのようにそろえるのも少し抵抗を覚える。んー、どうしましょうか。
僕から以上